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光に撃たれる太陽。
それを庇って、銃弾に貫かれる翔央。
完璧だと太陽は思った。
自分を守りたい翔央が、自分を守って死んだ。
それが一番美しい死に方だと太陽は思った。
しばらくすれば自分も死ぬだろう。太陽はその場にへたり込む。
火薬の匂い、血の臭い。
翔央は知らなくて良いんだ、何もかも。
だから知らないまま、自分と一緒に、死んでいくのだ。
「…太陽」
それまでとは違う光の穏やかな声が聞こえる。
「んー…」
「翔央…死んだよ」
「うん…」
太陽の心はもうここには無かった。
光りを無くした瞳はどこかボンヤリと見つめていた。
「なぁ、」
「何?」
光は何かを言いかける。太陽はそれに答える。
しかし光は首を横に振った。何も太陽に伝えようとはしなかった。
そして太陽の後頭部に銃口を突き立てる。
「お前は、本当にこれで良かったのか」
「いいよ、おれいっぱい考えた」
「…勝ち残ろうとは思わなかったのか?」
光の言葉に太陽は笑う。
「勝ち残って、どーすんの」
太陽は以前の彼とは違う様子で言葉を繋ぐ。
「俺、全部、覚えてる。俺が殺した人…どんな死に方をしたのかも、全部」
「……」
「どんな目をして、どんな最後の言葉を言って、そういうの全部」
「…太陽」
「そんなこと覚えてて、笑うこと何で出来ないよ」
分かった、と、光は呟いた。
これが彼の望みならかなえて上げようと思った。
もう戻れない。「あの日々」はどこにも無い。
「光、」
「ん?」
「ありがとう」
それが太陽の最期の言葉で、表情は穏やかなものであった。
光に撃たれる太陽。
もう庇う者はいない。
完璧だと光は思った。
「完璧だよ…、…――翔央」
そう光は呟いた。



光は翔央を打ち抜いた後、彼に近づいた。
そしてそっと微笑む翔央に光は目を見開いた。
翔央は全てを知っていた。
太陽の行いを、思惑を、その全てを、知っていたのだ。
なんで、と光は声に出さず翔央に伝える。
翔央は「言わないで」と首を横に振った。
そして光に「ありがとう」と声に出さずに言った。そして、死んだ。
――何もかも知らなくて良いんだ。君は綺麗なまま死んで。
知らなかったのは、太陽だった。
自分のために一生懸命太陽がやっていたこと、それの全てを翔央は見て見ぬふりをした。
きっと太陽も翔央も弱かったのだと光は思う。
相手を思うがあまりにこんな最期なんて、滑稽すぎると思った。
(そこまでして、守りたいものって何?)
そして。
ならば自分たちも相当滑稽だと思った。






「…、…何…してんだよ…」
(何って、見たまんまだよ)
光の足下には二つの死体。
呆然と呟く薮を光は冷静に見つめた。
「お前っ…自分が、何、…したかって…なッ…何で…」
(あぁ、分かってるよ)
ゆらりとぐらつく身体を押さえながら光は胸の内で答える。
「何とか言えよ!何してんだよ!何考えてんだよ!!」
(何も、)
なにも。
「――何も分かってないのは、薮の方だよ」
冷たいまでの声で光は呟く。
薮はただぼろぼろと涙を零すだけだった。



(滑稽すぎる、こんなの。よっぽど、翔央と太陽の方が、)



【鮎川太陽・山下翔央 死亡】



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