11.



「何してるの山ちゃん」
その言葉に山田はビクリと肩を揺らし、後ろを振り返る。
そこには冷静と怒りを兼ね備え、怖い顔をしている中島の姿があった。
「その鎌持って、どこ行くつもりだったの。山ちゃん」
やや小高い丘になっている二人の場所から、丁度見下げたところに二人の影が見えている。
岩本と阿部。
向こうからこちらは見えないのだろう。
全く気づかない様子で、地図を広げ何やら話し合っていた。
だからチャンスだ、と山田は鎌を持ち狙いを定める。
それを咎めたのが中島だった。
「…どこって下だよ。いるじゃん、二人」
「何で?鎌持って?」
「…ッ…当たり前だろ!もう、いい加減にしてよ裕翔君!」
中島と山田は出発してからすぐに口論になった。
お互いが嫌いなわけでも、組み合わせに納得していないわけではない。
力を併せてこの状況に協力して立ち向かおうと、そこまでは考え方は全て一緒だった。
しかし、ゲームに対する考え方が真逆だった。それは致命的とも言えた。
山田は、生き残るために手段を選ばない考え方を示した。それは殺生もやむ終えないという考え方だった。
中島は、この状況でも、いかなる場合でも人が人を殺めることは絶対にならないという考え方を示した。
山田は中島に「現実が見えていない」と訴え、中島は山田に「非情だ」と叱責した。
何が非情なものかと山田は憤る。もたもたとしていたら、死ぬのはこっちじゃないか。
確かに中島の言うことは人としては正しい意見なのかもしれない。
けれども「正しい」「モラル」が自分たちの命を救ってくれるのかといえば、それは嘘だ。
結局自分を救うのは自分でしかないというのに、中島はそれを理解してくれない。
しまいには、「山ちゃんが誰かを殺したら僕は自分から死ぬから」とまで言った。
中島の死は山田の死を意味する。
毅然とした中島の態度に山田はグッとこらえてきた。
この場所にたどり着くまでに、もう数組の姿を山田は見た。
避けたいようなペアもあったが、正面きって争えば勝てるであろうペアもあった。
それらを野放しにして、変な知恵や強力な武器など手に入れられたらどうするのだろう。
自分自身の命を犠牲にしてまで信念を貫く中島はどうしたって山田の理解の範疇を越えた。
そう頭に血が上っていた山田は、阿部と岩本が少しだけ自分たちが近づいたことに気がつかなかった。
ガサ、と音がして山田は鎌を持ったままで振り返る。
「…ッ!!」
阿部と岩本はその山田の様子を見て、一目散に逃げ出し、山田は不意をつかれて動く事は出来なかった。
まただ。また、取り逃がした。
けれども丁度山田の正面にいた中島は、近づく二人に気づいてたはずだ。
「…何で教えてくれなかったの」
「だって武器を持っていなかったんだ。攻撃してくるわけないよ」
武器を持ってるのは山ちゃんだけだったよ、と中島は静かに言う。
「わかんないだろ!隠してるかもしれないじゃん!」
「分るよ。みんなそんな酷いことはしない」
「じゃあさっきの放送は何なんだよ、もう死んだ奴いただろ!?」
「あれは事故か…、もしかしたら自分で死んじゃったのかもしれない」
可哀想だよね、と呟く中島をいよいよ山田は信じられなくなった。
もしかしたら最大の敵は彼なのではないだろうか。
殺さずに、殺されずに、そんなことが可能なわけが無いというのに。



「山ちゃん、行こう」
「…どこに」
「もしかしたら、解決の道があるかもしれない」
そんなもの無いよ、と山田は思ったが言わなかった。
「言っとくけど、山ちゃんが誰かを殺したら僕は本気で死ぬからね」
じゃあ死ねよ、と山田は思ったけれど言えるわけが無かった。



いつだって中島は、山田の前にまるで皇帝のように立ち塞がるのだ。



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