4.



チャンスが降ってきたんだ、と疑いなく光は思った。
いつだって運は自分の中にあった。それは幼いときからそうだった。
スポットライトも、センターのポジションも、特別扱いも、全て味わい途中で失う事は無かった。
彼と同じように。だから彼と残るのだ。
鞄の中の武器は銃だった。外れではない、当たりなのだ。
こういう武器を引き当てられることが自分の全てを物語っていると言っても過言ではない。
「藪ー、何のんびり歩いてんだよー」
光は藪を振り返る。
暗い顔をして歩く彼はきっと戦う気はないのだろう。
光にはそれがどうしようもなく不思議でたまらなかった。
何故だろう、勝てば約束された将来があるというのに。
「お前何でそんなやる気あんだよ…」
呆れたようにそう呟く藪に光はムッと眉を寄せる。
「何言ってんの、あったり前じゃんっ」
勝てば二人組でのデビューが決まっていた。
その後は映画、ドラマ、レギュラーの番組と、忙しいくらいの仕事の約束もされていた。
全ては成功のシナリオだった。
そのための殺し合いだ。
こんなに判り易く、確実で目に見えた目標なんて今までなかった。
自分の立ち回り次第でどうこうなるなんて、今までそんなことなんてなかった。
踊りが上手ければ、歌が上手ければ、人気があれば、どれをとっても「だからデビュー出来る」わけではない。
けれども殺し合いに勝てばデビューが出来る。
ただ、闇雲に与えられた事を正しいのか間違っているのか、それすらも分らずに行う毎日よりずっと簡単だ。
だから当たり前じゃないか、と光はもう一度言った
「当たり前じゃないよ」
反論するような凛とした藪の声が聞こえて、光は立ち止まる。
「当たり前なんかじゃない、今まで友達だったのに、みんな…」
モラルや道徳に包まれたような藪の言葉を聞いて光は内心で舌打ちをする。
こういうところが立場や扱いは同じであれども自分と大きく違うのだ、と光は藪を見て思った。
でも自分は友達を作ったり、仲良しごっこをしたいがために仙台から出てきたわけじゃない。
(…だから藪は甘いんだよ)
藪のことは認めていた。もっとずっと幼い頃は盲目に慕っているところもあった。
仕事は真面目で常に中心にいて、憧れのような存在だった。
それが今ではどうだというのか。
確かに特別扱いは変わらない。けれども昔の方が、より「そうだった」のではないだろうか。
だから苛々する。今の藪を見ていると。もっと君は高い場所にいる存在ではないのか。
心の中にもやもやとしたものが沸き上がり、思わず感情を吐き出すように口が開いてしまう。
でもそんなことをしたら駄目だ。
藪を傷つけたい訳じゃない。
光は、自分を落ち着かせるように息を吐いた。
(俺が、変えてみせるよ)
そういう力が自分にはあるような気さえした。



「でも、藪、俺死ぬのは嫌なんだよ」
「……」
「藪が死んだら、俺死んじゃうんだよ」
「そうだけど…」
「藪は俺を殺すの?」
「…光…」
光そういうのずるいよ、と言う藪の声は絞り出されるようで。
光が故意に作り出した重い雰囲気を壊すように、ガサリ、と草を掻き分ける人の足音が聞こえた。



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