0.



多分、誰よりも深く眠っていた。
目が覚めるとそこには、いつもの見慣れた光景が広がっていた。
多くの同性の背中はいつだって見てきた、そのものだった。
けれども今は何かが違う。
それは今まで感じたのことの無い雰囲気で、異様なまでの空気が辺りを包む。
今となってはどうして、自分が最後まで眠っていられたのかも理解出来ない。
静かなはずなのにざわざわと、心臓が鳴り響く。



ある小説が流行ったのだと、少し年の離れた友達が言っていた。
それはあまりに残忍な内容で、しかしそれが若者に受け入れられて社会現象にまでなったという。
どの時代もそういう「ワカモノ」は変わらないのだと思った。
黒の表紙に赤い文字で包まれる、分厚い、不気味な本。
あんな厚さは読めないな、と敬遠した。
ただ、それだけのはずだったのに。
それだけというのなら、今自分に付いている銀色の首輪は何だというのだろうか。



孤島。古びた木造校舎。目の前に並ぶ迷彩服とスーツの大人たち。
「ゲーム」の説明として放たれる言葉も台詞もどこか演技のようで。
まるで実感は無かった。夢のようだった。
けれどもライフルの先は全て自分たちに向けられている。
「偽物だろ、どうせ」と誰かが呟くと、威嚇されるように天井にライフルが発砲される。
乾いた音。白い煙。木片がパラパラと落ちて、それ以降誰も何も喋らなくなった。
一人ずつ名前が呼ばれる。
聞き慣れた名前が次々に上げられる。



「終わり」への「始まり」なのだと。
ただその実感だけが、身体を支配して。



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